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法定後見

法定後見について

「法定後見制度」は,「後見」「保佐」「補助」の3つ類型に分かれており、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が,本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって,本人を保護・支援します。

「後見」の対象者は、民法に以下の通り定義されています

「後見」の対象者は、民法に以下の通り定義されていますのイメージ

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

具体的には、重度の知的障害者・認知症高齢者などで、常に判断能力がなく、自分だけで物事を決定することが難しく、日常的な買い物も自分ではできない人ということになります(一時的に正常な状態に戻ることがあっても、1日のほとんど判断能力がないという場合も該当します。)完全な植物人間状態にある場合もこれにあたります。後見開始の審判がされ、後見がスタートすると、成年後見人が付けられます。成年後見人は、後見を受ける人に代理し財産を管理や、契約を結ぶなどの法律行為を行います。また後見を受ける人が不利益な契約を結んでしまった場合には、その契約を取り消して、白紙に戻すことができます。(日用品の購入等の日常生活に関する行為については除かれます。)

「保佐」の対象者は、民法に以下の通り定義されています

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

具体的には、知的・精神的障害のある人、認知症がある程度進行している高齢者など、判断能力が著しく不十分で、日常的な買い物くらいは自分でできるけれど、重要な契約などは無理という人が該当します。この類型に該当する人には、保佐人という援助者が付きます。保佐人には、不動産を処分したりお金を借りたりするなどの重要な法律行為について、後見人同様、不利益な契約を取り消すことができる権限が与えられます。また保佐を受ける人が同意し、裁判所が認めた事項については、本人に代わって契約を行うこともできます。


「補助」の対象者は、民法に以下の通り定義されています。

「補助」の対象者は、民法に以下の通り定義されています。のイメージ

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。

法定後見制度対照表
 
後見 保佐 補助
対象となる方 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
申立人 本人、配偶者、4親等内の親族、検察官など
市町村長

判断能力が著しく不十分な方 判断能力が不十分な方
成年後見人等に与えられる代理権の範囲 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
(本人の同意が必要)

申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
(本人の同意が必要)

成年後見人等の同意が必要な行為 民法13条1項所定の行為 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
(民法13条1項所定の行為の一部)

取消しが可能な行為 日常生活に関する行為以外の行為 本人が保佐人の同意を得る必要があった行為 本人が補助人の同意を得る必要があった行為

民法13条1項 (保佐人の同意を要する行為等)
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

  1. 元本を領収し、又は利用すること。
  2. 借財又は保証をすること。
  3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
  4. 訴訟行為をすること。
  5. 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
  6. 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
  7. 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
  8. 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
  9. 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

法定後見制度を利用するためには、家庭裁判所に後見開始の申立てをする必要がありますが、その前段階の準備として確認すべきことがあります。

1 現状の確認

法定後見制度の利用を考えるに至った理由は何かを確認します。
認知症の進行、遺産分割の必要性、知的障害者の親亡き後の対応、など、様々なケースが考えられます。また、本人以外にも、親族や施設関係者などからの利用の要請が考えられます。これにより、おもに「財産管理」を必要とするのか、「身上監護」を必要とするのかを判断していきます。

2 本人の状況の確認

本人の健康状況、生活状況、親族の状況などを確認し、成年後見制度を利用すべきか否か、本人に事理弁識能力があるかどうかの判断をする必要があります。
成年後見制度を利用すべきと判断した場合は、本人にとってどの程度の「財産管理」が必要なのか?あるいは、どの程度の「身上監護」が必要なのかを把握し、後見・保佐・補助 のどの類型に該当するかを判断します。

補助や保佐を利用する場合で、本人以外が申立を行う場合は、自己決定の尊重の観点から、本人の同意が必要となります。いずれにせよ、制度の概要については本人に説明する必要があります。
本人の判断能力によっては、契約能力があることも考えられることから、法定後見ではなく、任意後見制度を利用することも考えられるので、これについても判断をします。

3 財産の調査

本人の資産内容については、今後の「財産管理」や「身上監護」をどのように行っていくかの参考になるので重要です。詳細に調査する必要があります。現金、預金、不動産、証券などがどの程度あるのかを把握する必要があります。法定後見の申立て時には、調査結果を財産目録として提出します。

4 診断書作成依頼

法定後見開始の審判の申立てには、医師による診断書が必要になります。「保佐」や「後見」の場合は、鑑定をお願いすることも考えられますので、本人の状態を熟知している主治医や精神科医に依頼する必要があります。
診断書の記載内容については、「新しい成年後見制度における診断書作成の手引き」が参考になります。ただし、診断書の書式や取扱いは、各家庭裁判所で異なる場合がありますので、注意する必要があります。

法定後見制度を利用する場合には、家庭裁判所に、後見または保佐・補助の区別をして、申立てをします。この申立ては、本人の住所地(原則としては住民登録をしている場所)の家庭裁判所に申し立てることになります。

  1. 申立てをすることができる人
    申立てをすることができる人は,本人,配偶者,四親等内の親族,成年後見人等,任意後見人,成年後見監督人等,市区町村長,検察官です。四親等内の親族とは,主に次の人たちになります。

  2. 親,祖父母,子,孫,ひ孫
  3. 兄弟姉妹,甥,姪
  4. おじ,おば,いとこ
  5. 配偶者の親・子・兄弟姉妹

申立て費用

申立て費用のイメージ
  • 収入印紙800円分
    (保佐開始事件及び補助開始事件について同意権又は代理権の付与事件の申立てをする場合には,さらに各事件ごとに800円分の収入印紙が必要となります)。

  • 登記印紙4,000円分
  • 郵便切手4,300円分
    内訳
    500円切手× 5枚 80円切手×20枚 10円切手×20枚
    (家庭裁判所によって異なります。)

  • 鑑定費用(鑑定が必要な場合のみ、概ね10万円)
  • 相談費用(専門家にサポートを依頼した場合)

なお、成年後見等の審判の申立てを希望される場合、当相談室で手続きの支援(サポート)をすることが可能です。報酬額は、内容にもよりますが、52,500円(税込)からということになります。(交通費や印紙代等の実費は別途となります。)

申立ての理由、本人の生活状況、本人の置かれている環境 等

後見人等候補者に関すること
後見人等の選任は家庭裁判所が職権で行うので原則は不要であるが、実際には家庭裁判所で候補者を探すのには、手間や時間がかかるので、審理をすみやかに進行させるためにも候補者を挙げておくことがおすすめです。

1 申立人に関する書類(本人以外の申立ての場合)
  • 戸籍謄本
  • 申立人照会書(家裁所定の用紙)
2 本人に関する書類
  • 戸籍謄本
  • 戸籍附表または住民票
  • 登記されていないことの証明書(東京法務局等で交付)
  • 医師の診断書(所定の用紙がある場合あり)
  • 本人照会書(家裁所定の用紙)
  • 財産目録及びその資料(不動産登記簿謄本,預貯金通帳の写し等)
3 後見人等候補者に関する書類
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 戸籍謄本
  • 戸籍附表または住民票
  • 身分証明書(破産宣告等を受けていないことの証明書です。成年後見人等候補者の本籍地の市区町村役場戸籍担当係で発行されます、)
  • 登記されていないことの証明書(東京法務局等で交付)
  • 法人の場合、登記簿謄本または登記事項証明書
  • 後見人等候補者照会書(家裁所定の用紙)
お問い合わせ 行政書士:佐藤浩史が担当しております。